労務は会社の基礎工事、
脆弱な基礎に経営の安定はない

労務顧問

よくいただくご質問と回答

社会保険労務士に労務顧問を依頼するメリットは何でしょうか?

労務管理は、経営の視点から見ると、「攻め」ではなく「守り」ですので、それ自体がプラスを生み出す業務ではありません。会社経営の中では、どちらかと言えば地味で注目されにくい領域になります。

労務管理は、会社という建物を支える基礎工事のようなものと考えています。基礎が脆弱なところに、立派な建物(制度)を設計しても、ちょっとしたことで動揺して安定しません。会社が大きくなるほど、様々なタイプの人間が従業員として参加しますので、基礎の脆弱さが、経営リスクとして顕在化してきます。労務管理という業務は、勘所を押さえた専門家を活用していただき、ちょっとコストをかけて取り組むだけでも、一定の安定感を出すことができる領域です。会社の成長ステージに応じて、ぜひとも投資対象としてご検討いただきたいと考えています。

【労務顧問の活用例】

  • 未払賃金トラブルの予防
    賃金の消滅時効は3年間遡ることになるので、トラブルが顕在化してから慌てて対策を打とうとしても、現実問題として何もできることがありません。あらかじめ、勤怠システムの設定、給与計算システムの設定、固定残業手当の運用などを固めておけば、後から「未払賃金」「サービス残業」などと、つまらぬ指摘を受けにくい状況を作っておくことが可能になります。
  • 労使トラブルの予防
    採用にまつわるトラブル、退職に関するトラブル、勤務態度が思わしくない従業員、メンタルヘルスの不調など、従業員との間でデリケートな問題が発生します。中にはインターネットで調べて会社担当者よりも法律知識に詳しい従業員もいます。そうした従業員に安易な対応をしてしまいますと、かえって事態を複雑化させてしまいます。事前に社会保険労務士に相談しながら対応することで、会社側が、法律的な線引きを知った上で対応に臨むことができますので、無防備に法令違反を犯してしまうリスクを大幅に減らすことができます。
  • 労働基準監督署対策
    労働基準監督署の臨検傾向、指摘されやすい論点を知っている社会保険労務士を顧問に置いておくことで、定期的に発生する労働基準監督署調査に余裕をもって対応することができるようになります。
  • ハラスメント等のイレギュラー対応
    近年多くなっているハラスメント申告。相談者と行為者の言い分が一致せず、判断や対応が難しいケースが増えています。その際に、社会保険労務士の助言を得ることで、感情問題ではなく法律問題として客観視することで、解決への道筋が描きやすくなります。また、定期的な研修や規程類の整備も行うことができます。
  • 法改正の把握、対応
    例えば育児介護休業法など、頻繁に法改正が行われる領域もあります。また、労働基準法改正のように事業運営に対して影響度が大きな法改正もあります。こうした法改正の情報を事前に収集し、必要な規程整備を進めていくために、社会保険労務士の活用はたいへん有効です。
未払賃金トラブルの予防で優先的に対応すべき部分はどこでしょう

後日になって、労働基準監督署や従業員からの指摘対象になりやすい箇所は、早めに手を打っておくことがよろしいかと思います。時間が経つほど解決が難しくなっていきます。他社事例から、トラブルの発生率が高いと考えられる優先事項は、次の5点です。

  • 労働時間端数の丸め処理や切り捨てはしない。(原則1分単位で記録して計算することが求められています。)
  • 残業許可制による切り捨てはできるだけしない。管理上必要なのであれば、一方的に切り捨てるのではなく、サービス残業が発生していないかどうかの実態確認措置も合わせて行い記録化しておく。(入退室のログの確認、抜き打ち検査、その他居残りできないような仕組み)
  • 給与計算の肝である「正しい残業単価計算」を確実に押さえておく。「基準内賃金に入れるべき手当の確認」「分母数の時間数が正しいことの確認」は法的根拠をもって確認しておく。
  • 固定残業手当はとにかく明瞭な設計にする。「基本給にコミコミ方式」「複数の手当を組み合わせて固定残業を水増しする方式」「名称・内容が固定残業手当として認識できない方式」「金額や時間数が過大な方式」「賃金規程に記載がない運用」「差額を支払わない運用」などは、全て疑義要因になり、自ら否認リスクを作り出すことになります。万が一、自社の固定残業手当制度が否認されてしまうと、全従業員に対して、割増賃金を再計算して過去遡及払いすることになります。固定残業手当の運用で中途半端に危ない橋を渡ることは、全く経営的なメリットがありません。
  • 管理監督者を増やしすぎない。名ばかり管理監督者を増やして一時的に人件費(残業代)が圧縮できたように見えても、実態は、リスクの先送りであって、後日請求される懸念があります。(仮に請求されない場合でも、管理職に対して、会社は大きな弱みを抱えながら経営していくことになります。それは経営者として正しい判断でしょうか?)
    残業代の対象外になる管理監督者を安易に増やさず、地位、権限、処遇、裁量性など一定要件をクリアできる高位管理職に限定する。中途採用で実力や人柄が分からない従業員を安易に管理監督者扱いにしない。
労働基準監督署の臨検はどのようなものがありますか?

次のような種類がありますが、会社にとっては、いずれも行政調査として粛々と対応をする必要があるので、その違いを論じることはそれほど意味が大きなことではないかと思います。

【労働基準監督署の調査】

  • 定期監督
    (ランダムに調査対象になり、一般的なヒアリングが行われる。)
  • 申告監督
    (自社の労働者が労働基準監督署に法令違反を申告した場合に発生する。)
  • 特定目的の監督
    (裁量労働制の調査、労災発生後の臨検等)

いずれの調査も、義理人情ではなく、客観的資料に基づいた調査になりますので、いざその局面が到来した際に、要求された資料(法律上義務づけられた資料)をスムーズに用意できることが勝負所になります。その大事な局面で、「就業規則が届出されていない」「36協定が届出されていない」「まともなタイムカードが提出できない」「賃金台帳の内容が提出できるような代物になっていない」「年次有給休暇の管理資料が存在しない」といった根本的な欠落があると、調査対応のスタートラインに立つ前に「負け戦」になってしまいます。経営の基礎が脆弱にならないように、普段からの整備が大切です。

ハラスメント対応の基本を教えてください。

「日常対策」と「発生時対応」に分けて整理すると分かりやすいと思います。「日常対策」については、平素はそこに時間やコストをかけるメリットが見えにくいため、なかなか真剣になれない場合があるのですが、万が一事件が発生した場合に、会社の不作為が問われないようにするという意味でたいへん重要です。大きな事件が発生して、その時になって悔やんでも遅いのです。

【日常対策の3本柱】

  • ハラスメント防止に関する規程、細則、対応マニュアル等の策定
  • 定期的な研修
    (顧問社労士に講師依頼をしたり、オンライン教材を使用したり方法は様々です。)
  • 相談窓口の整備と周知
    (社内の相談窓口が機能していないように見えてしまうと、不安になった従業員が外部通報をしやすくなりますので社内相談窓口を固めましょう。)

【発生時対応】

  • 相談者からのヒアリング(二次ハラスメントに注意)
  • 行為者からのヒアリング
  • 第三者からのヒアリング
  • ヒアリング結果の整理、事実認定、処分案検討
  • 相談者、行為者への報告
  • 処分決定、通知

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