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労務デューデリジェンス

よくいただくご質問と回答

上場審査(労務)とは、何が求められる審査なのですか?

一言で表現しますと「労働法令の遵守」になるのですが、取引所から、具体的なチェックリストのような形で審査基準が公開されているようなものではなく、会社にとっては、過去問や模範解答が分からない試験を受けるような不安感があるところかと思われます。審査上の論点について実務経験を有する専門家の支援を受けることが望ましいです。

労務DDは必須ですか?

労務DD自体は法定監査ではありませんが、社外の社会保険労務士等による客観的、網羅的な調査を行うことは、会社にとっても有用な情報を得ることができます。
主幹事証券会社による引受審査に進むための事実上の予備審査になっている現状があると考えています。A1記載のとおり、会社側が自力で、網羅性をもって自社の状況を把握することが難しいためです。多くの証券会社も、早い段階での労務DD実施を推奨しているところです。

労務DDはどのタイミングで実施すべきですか?

実施期日が法定されているものではございませんが、一般にN-2期までにご依頼いただくケースが多い印象です。上場準備は時間との戦いになりますので、会社側が、改善活動に使える時間を少しでも増やすために、できるだけ早めに労務DD実施することが有利になります。
先行できれば、改善着手が早くなり、紛争リスク、監督署臨検リスクがコントロールしやすくなります。また、未払賃金につながるような不備があった場合は、改善が早いほど、影響範囲の拡大を防ぐことができます。

上場審査における主要論点は何ですか?

労働法令はいずれも重要であることは言うまでもありませんが、経験上、引受審査で質問が集中する「主要論点領域」が4つ存在すると考えています。いずれも経営リスクや財務に影響を与える領域です。改善対応にも一定の時間を要する領域ですので、まずは、この「主要4大論点」を攻略することがIPO成功の秘訣と考えています。

  • 勤怠管理
    1. 労働時間制度(原則的な所定労働時間、フレックスタイム制、変形労働制、裁量労働制など)の選択が適切か?
    2. 勤怠システムの設定は適切か?(1分単位打刻、残業申請制の実態確認、勤怠承認ルート、過重労働アラート設定など)
    3. 「サービス残業防止措置」はどのような手法を採用するか?(PCログ、入退室ログ、その他業務システムや日報など)
  • 36協定遵守と過重労働対応
    1. 協定内容、特別条項の手続面、労働者代表の選出方法
    2. 「年6回」「月80時間平均」「年720時間以内」を守り切ることができるか?
    3. 管理監督者も含めた過重労働対策(健康福祉確保措置、月80時間超過の医師面接指導など)
  • 未払賃金
    1. 単価計算式は適正か?(算定基礎賃金、月平均所定労働時間の根拠など)
    2. 深夜、法定休日、60時間超などの割増率
    3. 固定残業代の明確区分性、対価性、差額支給の運用
    4. 労働時間の端数切り捨て、未申告の労働時間、架空休憩、振休ストック(未払)

    など

  • 名ばかり管理監督者、名ばかり裁量労働制
    1. 管理監督者の各種要件は合理的に説明可能な状況になっているか?(地位権限、処遇、裁量性、組織図上の位置づけ、人数バランス、管理職本人の納得感など)
    2. 裁量労働制の運用は、労働基準監督署の定期臨検に耐えられる内容になっているか?(対象業務、対象労働者、協定書と協定届、みなし労働時間との乖離、健康福祉確保措置、苦情処理措置、個別同意)

重要論点を、各論点に要素分解した上で、法的に不備のある箇所を特定して改善提案を行います。

その他重要論点はありますか?

「主要4大論点」の他にも、重要な論点は多数存在します。下記に一例を記載します。

  • 安全衛生(特に50人以上の事業場の管理)
    1. 安全管理者、衛生管理者
    2. 産業医(健診意見聴取、面接指導なども含む)
    3. 安全衛生委員会
    4. 雇入時検診、定期健診、特殊健診
    5. ストレスチェック
  • 退職者、休職者ケア
    1. 取引所の「情報受付窓口」の存在を想定した、退職者管理を行っているか?
    2. イレギュラー退職者(通常の自己都合退職ではない者)について、経緯や顛末の把握はできているか?退職経緯が確認できる資料(面談記録、合意書等)は保存されているか?
    3. 休職者について、パワーハラスメントや過重労働等の業務災害を主張される懸念はないか?
  • 業務委託
    近年、会社が、個人事業主やフリーランサーとの契約を行い、外注業務を委託することがビジネスの現場で一般化しています。こうした関係性に、労働関係の要素を持ち込まないように、厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に 行うためのガイド」に添って、偽装請負行為の疑義を受けないように、適切な契約関係を保つことが大切です。
労務DDの費用を抑えるポイントはありますか?

漠然と発注してしまうと調査スコープが拡大してしまい見積金額の上昇要因になります。必要な調査対象を明確に指定することが適正価格見積を取るためのポイントになります。
特に、グループ経営等で、複数法人存在する場合に注意が必要です。漠然と発注してしまうと、対象数に応じてコスト増になります。労務管理体制が同一、類似する法人は、まとめて調査できる場合がありますので、管理状況の類似性もお教えいただけますと、効率的に調査を進めるためのご提案がしやすくなります。もちろん報告書の納期も早くなります。

労務DD発注先選定のポイントはありますか?

労務DDについては、外注先を複数比較して選定することになると思いますが、労務DD単体での価格比較にはあまり意味がないように思われます。労務DD報告書は、その後の引受審査に向けた改善対応の中で活用するための資料ですので、会社が必要とする情報が出てこないと活用が難しくなってしまいます。例えば、指摘は行うが改善の方向性が示されないような内容になっている場合、その後の引受審査を想定していないような内容(重要度の分類がされていない、重要度が高くない形式的な論評に終始している等)になりますと、報告書を手にご担当者様が途方に暮れることになってしまいます。ご商談の際には、報告書のスタンスや事後支援の可否などもご確認いただくとよろしいかと思います。

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