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【日本語】Q2 日本の社会保険制度の概要を教えてください
  • 2025.02.05

会社で働く人に適用される社会保険制度は、狭い意味での社会保険と労働保険の2つに分かれます。

<<社会保険>>
狭い意味での社会保険は、医療保険制度と長期的な収入損失に備える年金保険の2つです。会社で働く人が加入する医療保険制度は健康保険、年金保険は厚生年金保険です。

■ 健康保険
(1) 加入対象者
①役員(報酬が払われている人。非常勤役員の加入要否は実態による)
②社員
③パートタイム従業員のうち、一般の社員の労働時間の4分の3以上働く方
④特定適用事業所(上記の①から③の被保険者数が51人以上の事業所)に勤務する短時間労働者(※)

※ 短時間労働者とは
1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である方のうち、以下のa、b、cのすべてに該当する方をいいます。

a. 週の所定労働時間が20時間以上であること
b. 所定内賃金(給与のうち、通勤手当や残業代を除いたもの)が月額88,000円以上であること
c. 学生でないこと

(2) 保険料額と保険料の払い方
保険料は、標準報酬月額(※1)に保険料率をかけた額で、会社と労働者(被保険者)で半額ずつ負担して支払います。
2024年度の保険料率(協会けんぽ東京支部の場合※2)は99.8/1000です。
保険料率は毎年度見直しがあります。
40歳以上65歳未満の被保険者は、健康保険料と併せて介護保険料も徴収されます。
介護保険料も労使折半で負担し、2024年度の全国健康保険協会の料率は11.58/1000です。

賞与についても、賞与額から1000円未満を切り捨てた額(標準賞与額と呼ばれる。年度の累計額573万円が上限)に、標準報酬月額と同じ率の保険料率をかけた保険料を会社と被保険者で半額ずつ負担して支払います。
保険料は納付書の使用または口座振替より毎月支払います。

(3) 給付の内容
健康保険の被保険者及びその家族が病院にかかったときの医療費の自己負担率は3割で、残りの7割を健康保険制度が負担します。
そのほか、高額療養費(医療費の3割でも自己負担が高額になる場合の補助)、出産手当金(出産のために働けない期間の所得補償)、傷病手当金(私傷病による療養のために働けない期間の所得補償)、埋葬料(死亡に関する一時金)などがあります。

■ 厚生年金保険
(1) 加入対象者
健康保険と同じです。

(2) 保険料額と保険料の払い方
基本的には健康保険と同じですが、料率と標準賞与額(保険料の対象となる賞与額)の上限が異なります。
保険料率は183/1000です。現在においては、将来の料率変更予定はありません。
標準賞与額の上限は、1か月につき150万円です。

(3) 給付の内容
老齢・障害・死亡という長期の収入喪失(減少)に対して給付を行います。
老齢厚生年金は、65歳から支給されます。
障害厚生年金は、障害等級1級、2級、3級の方に対して年金給付を行います。
死亡については、遺族に対して、遺族厚生年金の給付を行います。遺族については、続柄や年齢等の要件があります。

<<労働保険>>
労働保険は、労働者を保護するための制度であり、業務上のけがや病気、失業等の事態に備える保険です。

【参考資料】「労働保険の成立手続はおすみですか」(中国語版)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/dl/ch20190704.pdf

■ 労災保険
(1) 加入対象者
すべての労働者が対象です。1日しか雇用されない人も対象となります。

(2) 保険料額と保険料の払い方
労災保険料は、事業主のみが負担します。年1回の年度更新(※)により支払います。
※ 年度更新については、後述。

(3) 給付の内容
業務上により又は通勤途上に被災した労働者の療養(現物給付(治療行為や薬剤等)または現金給付)、療養期間、労務に服することができず休業する期間の所得補償がメインの給付です。
また、治療が終了した後、一定の障害が残った場合には、年金または一時金が支給されます。
業務上により又は通勤途上に被災した労働者が死亡した場合の一時金、遺族に対する所得補償給付もあります。

■ 雇用保険
(1) 加入対象者
週所定労働時間20時間以上かつ労働契約期間31日以上の労働者。

(2) 保険料額と保険料の払い方
保険料は、賃金に保険料率をかけた額で、会社と労働者(被保険者)で負担して支払います。
保険料率は毎年度見直しがあります。
2024年度の一般の事業の保険料率は15.5/1000(会社の負担分が9.5/1000、労働者の負担分が6/1000)です。

毎月、労働者に支払う給与から、労働者負担分を控除し、年1回の年度更新(※)の際に、会社と労働者の負担分を合算して支払います。
※ 年度更新については、後述。

(3) 給付の内容
仕事を辞めた後、求職しているにもかかわらず、失業している期間について、所得補償を受けることができます。(離職理由、被保険者でいた期間、年齢等により給付日数が異なります)
そのほか、育児や介護により、長期間、仕事を離れなければならない労働者が仕事を続けることができるよう所得補償の給付を行っています。
育児休業・・・原則、子が1歳まで。
介護休業・・・通算で93日分まで。

<<年度更新>>
■ 労働保険の納付の方法/労働保険の年度更新とは

保険給付は、労災保険と雇用保険のそれぞれの制度で行われますが、保険料の納付については、労働保険としてまとめて行います。

労働保険料の納付は、その年度の見込み賃金をもとに会社が雇用保険料と労災保険料を算定、申告して前払いをする「年度更新」という方法で行われます。手続きの期間は6月1日から7月10日までの間です。この期間に、1年分の前払いと前年分の清算を行います。

年度更新で納付する労働保険料の額は次のとおりです。
「確定保険料の過不足精算」+「概算保険料」+「一般拠出金」

・確定保険料
前年4月から当年3月までの期間について、実際に労働者に支払った賃金総額(1000円未満は切り捨て)に労災保険率と雇用保険料率をそれぞれかけて、前年度分の労災保険料と雇用保険料の額を確定します。これを確定保険料といいます。
確定保険料は、前年度に概算保険料として前払いしているため、前年度に支払い済みの概算保険料との差額を精算するのみです。前年度に支払い済みの概算保険料よりも確定保険料が多ければ不足分を納付、少なければ過払い分を当年度への充当(または還付)します。

・概算保険料
当年4月から翌年3月までの期間について、労働者に支払われる賃金総額(1000円未満は切り捨て)の見込額に労災保険率と雇用保険料率をそれぞれかけて、当年度分の労災保険料と雇用保険料の額を概算します。通常(※)、前年度の賃金総額を当年度の賃金見込額とします。これを概算保険料といいます。
※ 賃金総額の見込額が、前年度と比較して2分の1以上2倍以下に収まる場合。

・一般拠出金
確定保険料の労災保険料対象賃金に一般拠出金の率(令和5年度の場合、0.02/1000)をかけて、一般拠出金の額を算出します。
一般拠出金とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、石綿による健康被害者の救済費用に充てるため、労災保険適用事業の事業主全てが負担するものです。

原 祐美子 Profile

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